Salesforceのライセンス数と実利用者数のギャップ問題
契約しているSalesforceのライセンス数と、実際にログインしている利用者数に大きな差が出ていませんか。シート余りが発生する原因と見直しの考え方を解説します。
Salesforceの契約更新のタイミングで利用状況を確認したところ、「契約しているライセンス数に対して、実際にログインしている利用者が半分程度しかいなかった」というケースは決して珍しくありません。ユーザー課金型のライセンス体系では、契約シート数と実利用者数のギャップがそのまま無駄なコストとして積み上がっていきます。
なぜこうしたギャップが生まれるのか、そしてどのように見直していけばよいのか。この記事では、Salesforceに限らずユーザー課金型SaaS全般で起こりやすいシート余り問題の原因と、現実的な対処の考え方を整理します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- シート余りは異動・退職時のライセンス整理漏れが主な原因になりやすい
- 「念のため多めに契約する」という心理的な余裕確保もギャップを広げる要因
- 定期的な利用状況の棚卸しとライセンス見直しのサイクル化が対策の基本
- 契約更新前の見直しに加えて、費用構造自体を見直す選択肢も検討に値する
異動・退職時のライセンス整理漏れが主な原因
結論:契約シート数と実利用者数のギャップが生まれる最も典型的な原因は、異動や退職に伴うライセンスの解約・付け替え手続きが徹底されていないことにあります。
担当者が異動・退職した際、業務システムのアカウント削除は情報システム部門やバックオフィスのチェックリストに含まれていないことが多く、結果として「使われていないのに契約は残っている」シートが少しずつ積み上がっていきます。特に組織変更が頻繁な企業では、このギャップが年々拡大しやすい傾向があります。Salesforceの隠れコストについては、Salesforceの「隠れコスト」:ライセンス費以外に払っているものの洗い出し方でも解説しています。
「念のため多め」の契約がギャップを広げる
結論:将来の増員を見込んで、あるいは急な追加依頼に対応しやすくするために、実際の利用人数より多めにライセンスを契約しておくという運用判断も、シート余りを広げる要因の一つです。
事業計画上は合理的な判断に見えても、増員のタイミングが後ろ倒しになったり、想定していた組織拡大が実現しなかったりすると、余剰分のライセンス費用がそのまま固定費として発生し続けることになります。ユーザー課金型SaaSの費用構造そのものについては、ユーザー課金型SaaSの費用構造が組織成長と相性が悪い理由で詳しく解説しています。
定期的な利用状況の棚卸しとライセンス見直しのサイクル化
結論:シート余りを継続的に抑えるためには、契約更新のタイミングだけでなく、四半期や半期など定期的な間隔で利用状況を棚卸しし、ライセンス数を見直すサイクルを仕組み化することが重要です。
Salesforceにはログイン履歴や利用状況を確認できる機能があるため、これらを活用して「直近90日間ログインがないユーザー」を定期的に抽出し、必要性を確認する運用を組み込むことができます。SaaS解約前のチェックリストの考え方は、シート数の見直しにもそのまま応用できます。詳しくはSaaS解約前のチェックリスト:契約更新月から逆算する準備スケジュールをご覧ください。
棚卸しで確認したい項目
| 確認項目 | 目的 |
|---|---|
| 直近のログイン履歴 | 実質的に利用されていないアカウントの洗い出し |
| 異動・退職者リストとの突合 | 削除漏れアカウントの特定 |
| 部署別のライセンス保有数 | 部署間の過不足の可視化 |
費用構造そのものを見直す選択肢も検討する
結論:シート余りの見直しを繰り返しても構造的にギャップが解消しにくい場合は、ユーザー数に依存しない費用体系のシステムへの切り替えも選択肢として検討する価値があります。
ユーザー課金型のライセンス体系は、利用者数の増減に応じて費用が直接変動する仕組みであるため、組織の人数変動が大きい企業ほど管理コストと無駄が発生しやすい構造にあります。仮に50名でSalesforce Enterpriseを契約した場合、公表価格(21,000円/ユーザー/月、税抜・年間契約・2026年時点)で試算すると年間で約1,260万円、5年間では約6,300万円という規模になります(あくまで試算であり、実際の契約条件によって変動します)。アカウント数に依存しない費用体系のシステムへの移行については、脱Salesforce完全ガイド:判断基準・進め方・費用のすべてで詳しく解説しています。
まとめ
Salesforceのライセンス数と実利用者数のギャップは、異動・退職時の整理漏れや「念のため多め」の契約判断によって発生しやすい問題です。定期的な利用状況の棚卸しをサイクル化することが基本の対策ですが、構造的にギャップが解消しにくい場合は、ユーザー数に依存しない費用体系への切り替えも視野に入れる価値があります。
Irwin&co株式会社では、ユーザー数に依存しない開発費+保守運用費のみの費用体系で、業務システムの開発をご支援しています。ライセンス費用の見直しについて相談したい場合は、お問い合わせからご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 未使用のライセンスはどのように確認すればよいですか? A. Salesforceのログイン履歴レポートなどを活用して、直近一定期間ログインのないユーザーを抽出する方法が一般的です。
Q. ライセンスの見直しはどのタイミングで行うのがよいですか? A. 契約更新の直前だけでなく、四半期ごとなど定期的なタイミングで確認するサイクルを組み込むことをおすすめします。
Q. ユーザー課金型ではないシステムにすると、必ずコストが下がりますか? A. 組織規模や利用人数の変動によって効果は異なるため、一概には言えませんが、人数増加が見込まれる企業ほどコスト差が大きくなる傾向があります。
Q. Salesforceのライセンス体系を見直す際、社内の合意形成はどう進めればよいですか? A. 実際の利用状況データと費用試算を基に、経営陣に向けたROI試算を用意すると合意形成が進めやすくなります。詳しくはシステム投資の稟議を通す:経営陣に響くROI試算のつくり方をご覧ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
