ユーザー課金型SaaSと組織成長の費用構造の相性

ユーザー数に応じて費用が増えるユーザー課金型SaaSの料金体系が、組織の成長フェーズとなぜ相性が悪くなりやすいのかを、費用構造の観点から解説します。

2026年08月30日
ユーザー課金型SaaSと組織成長の費用構造の相性

「人が増えるたびに、システムの費用も増えていく」——組織が成長するタイミングで、こうした感覚を持つ情報システム担当者や経営者は少なくありません。事業拡大に伴って採用を増やし、新しいメンバーがCRMやSFAを使い始めるたびに、月々のライセンス費用も比例して膨らんでいく。成長を喜ぶべき局面で、費用の増加が悩みの種になってしまうという声が寄せられることがあります。

これは多くのSaaSが採用している「ユーザー課金型」という料金体系の特性に起因しています。1ユーザーあたり月額いくら、という分かりやすい料金設定である一方、組織の人数構成が変化していくフェーズにおいては、費用構造そのものが成長の足かせに感じられることがあるのです。

この記事では、ユーザー課金型SaaSの費用構造がなぜ組織成長と相性が悪くなりやすいのかを整理し、この特性を踏まえた費用の考え方を解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • ユーザー課金型の料金体系は、組織拡大とともに費用も線形に増えていく構造を持つ
  • 全員がフル活用していなくても、アカウントを持つ人数分の費用が発生し続けるケースが多い
  • 人員の増減が激しい組織ほど、費用の予測やライセンス数の最適化に手間がかかりやすい
  • 費用体系がユーザー数に依存しないシステムへの移行は、規模が大きくなるほど検討価値が高まる選択肢の一つ

ユーザー課金型SaaSの料金構造とは

結論:ユーザー課金型SaaSは「1アカウントあたり月額○○円」という形で、利用人数に比例して費用が決まる料金体系です。

多くのSaaS型CRM/SFAは、利用するユーザー数に応じて月額費用が積み上がっていく課金体系を採用しています。例えばSalesforce Enterpriseの場合、2026年時点で公表されている価格は21,000円/ユーザー/月(税抜・年間契約)とされており、仮に50名で利用した場合は年間で約1,260万円、5年間では約6,300万円という試算になります(試算はあくまで一例であり、実際の費用は契約条件や利用プランによって異なります)。

この料金体系は、少人数でスタートする段階では分かりやすく導入しやすいというメリットがあります。一方で、組織が成長し利用人数が増えていくフェーズでは、費用の増加ペースが事業成長のペースと必ずしも一致しない、という課題が表面化しやすくなります。

なぜ組織成長と相性が悪くなりやすいのか

結論:組織が成長するほどライセンス費が線形に増える一方、システムから得られる価値が同じペースで増えるとは限らないためです。

具体的には、次のような要因が組み合わさって「相性の悪さ」を生み出しています。

  • 全員がフル活用するとは限らない:新入社員や一部の部署では、機能の一部しか使わないにもかかわらず、フルライセンス分の費用が発生することがある
  • 休職・退職・異動のたびにライセンス調整が発生する:人員の入れ替わりが多い組織ほど、ライセンス数の管理に運用負荷がかかる
  • 繁忙期・閑散期での人数変動に対応しづらい:季節的に人員が増減する業種では、常に最大人数分の費用を払い続けることになりやすい
  • 成長すればするほど固定費化する:採用を増やすほどシステム費用も比例して増え、成長投資の一部が固定費に置き換わっていく

これらは料金体系自体の問題というより、「人数に比例して費用が決まる」という構造上、組織の成長スピードや人員構成の変化と噛み合わないことがある、と捉えるのが実態に近いといえます。

費用構造を見直す際の考え方

結論:自社の人員構成の変化パターンを把握したうえで、ユーザー数に依存しない費用体系への移行が合うかどうかを検討することが現実的です。

まず取り組みたいのは、現状のライセンス費用のうち「実際にフル活用されている分」と「そうでない分」を可視化することです。利用状況のログを確認し、ログイン頻度や機能の利用率が低いアカウントがどの程度あるかを把握するだけでも、費用最適化のヒントが見えてくることがあります。

そのうえで、組織の成長ペースが速い、あるいは人員の増減が激しいという特性がある企業では、開発費と保守運用費のみで構成され、アカウント数に依存しない費用体系のシステムへの移行を検討する価値が出てきます。こうした判断軸についてはSaaS継続かスクラッチ開発か:5年総額で比較する判断フレームワークで詳しく解説しています。また、Salesforceを続けた場合の企業規模別の費用試算についてはSalesforceを続けるといくらかかるかもあわせてご覧ください。

Irwin&co株式会社では、フォーム回答から約3分で概算見積書・要件定義書を自動生成する仕組みを用意しており、1分の無料見積から自社の場合の費用感を確認することもできます。

よくある質問(FAQ)

Q. ユーザー課金型SaaS自体が悪い仕組みなのでしょうか? A. 一概にそうとは言えません。少人数での利用や、機能をフル活用できている組織にとっては合理的な料金体系です。組織の成長フェーズや人員構成の変化パターンとの相性の問題として捉えるのが適切です。

Q. ライセンス数の最適化だけでも効果はありますか? A. 利用実態を可視化してライセンス数を見直すだけでも、コスト削減につながるケースは多く見られます。まずはそこから着手するのが現実的な第一歩です。

Q. アカウント数に依存しない費用体系にすると、必ず安くなりますか? A. 開発規模や運用期間によって総費用は変わるため、必ず安くなるとは限りません。ただし、人員数が多い組織や成長スピードが速い組織では、長期的な総コストで有利になるケースが多く見られます。

Q. 移行を検討する場合、まず何から始めればよいですか? A. 現状のライセンス費用の内訳と利用実態を洗い出すことから始めるのがおすすめです。そのうえで、移行の実現可能性を具体的に検討するとよいでしょう。

まとめ

ユーザー課金型SaaSの費用構造は、少人数での利用には向いている一方、組織が成長し人員が増減していくフェーズでは費用の増加ペースが事業成長と噛み合いにくくなる、という特性を持っています。まずは現状のライセンス利用実態を可視化し、そのうえでアカウント数に依存しない費用体系への移行が自社に合うかどうかを検討することが現実的な進め方です。

Irwin&co株式会社は生成AI特化の受託開発を行っており、開発費と保守運用費のみで構成されアカウント数に依存しない費用体系を採用しています。組織の成長に費用構造が合わなくなってきたと感じている場合は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

お問い合わせ

生成AI活用やAI開発について、お気軽にご相談ください。

まずは相談する