Salesforceの「隠れコスト」の洗い出し方

Salesforceのライセンス費以外にかかっている人件費・カスタマイズ費・教育コストなどの「隠れコスト」を洗い出す観点と、費用対効果を見直すための考え方を解説します。

2026年08月21日
Salesforceの「隠れコスト」の洗い出し方

「Salesforceのライセンス費は把握しているが、実際にどれだけコストがかかっているのか正確には分からない」——経営管理やシステム部門の担当者から、こうした声が寄せられることがあります。月額のライセンス費用は請求書を見れば一目瞭然ですが、それ以外にかかっている費用は部門をまたいで発生するため、全体像を把握しづらいという事情があります。

ライセンス費だけを見て「思ったより安い」と感じていても、カスタマイズの保守、運用定着のための教育、二重管理の解消にかかる工数などを積み上げると、実際の総コストはライセンス費の何倍にもなっているケースも珍しくありません。この「見えにくいコスト」を洗い出さないまま費用対効果を判断してしまうと、本来検討すべき選択肢を見落としてしまう可能性があります。

この記事では、Salesforceのライセンス費以外にかかっている代表的な隠れコストを整理し、自社で洗い出すための実践的な観点を解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • ライセンス費は総コストの一部にすぎないという前提を持つことが出発点になる
  • カスタマイズ保守・教育・二重管理対応など、部門をまたいで発生するコストが見えにくい
  • 隠れコストの多くは「人件費」という形で発生するため、金額換算しづらい
  • 洗い出した総コストをもとに、運用改善か再設計かを判断するのが現実的な進め方

なぜ隠れコストは見えにくいのか

結論:隠れコストの多くはIT部門の請求書ではなく、現場の人件費として分散して発生するため、一つの数字として集計されにくいという構造的な問題があります。

Salesforceのライセンス費は経理上「システム費用」として明確に計上されますが、カスタマイズの保守にかかる開発担当者の工数や、現場が入力・確認に費やす時間は、多くの場合「通常業務の一部」として扱われ、コストとして意識されません。結果として、実際には相応の金額が発生しているにもかかわらず、経営層の目に触れる数字には反映されないという状態が生まれます。

隠れコストの正体1:カスタマイズ・保守にかかる人件費

結論:自社向けにカスタマイズを重ねるほど、バージョンアップや仕様変更時の保守工数が積み上がっていきます。

Salesforceは標準機能だけでも高機能ですが、自社の業務に合わせるためには相応のカスタマイズが必要になることが多く、その設定・保守を担当するエンジニアやパートナー企業への支払いが継続的に発生します。カスタマイズが複雑になるほど、仕様変更のたびに影響範囲の調査が必要になり、保守コストは年々増加していく傾向があります。

隠れコストの正体2:運用定着のための教育・サポートコスト

結論:現場に使いこなしてもらうための教育・問い合わせ対応にも、継続的な工数がかかっています。

新しい担当者が入るたびに操作研修が必要になり、日常的な問い合わせ対応にも情報システム部門の工数が割かれます。特にSalesforceが現場に定着しない状態が続いている企業ほど、教育・サポートの負荷は高くなりやすく、これも見えにくいコストの一つです。

隠れコストの正体3:二重管理・シャドーITへの対応コスト

結論:CRMの使いにくさからExcelなどへの「回帰」が起きると、二重管理の解消や データ整合性の確認に余計な工数がかかります。

現場がCRMを使いこなせずExcel管理に戻ってしまう状態になると、正式なデータと現場の実態がずれてしまい、定期的な突き合わせ作業が必要になります。この作業自体が見えにくい人件費として積み上がっていきます。

隠れコストを洗い出す実践的な観点

結論:「誰が」「どの作業に」「どれくらいの時間を使っているか」を項目ごとに棚卸しすることが、洗い出しの基本です。

項目確認すべきこと
カスタマイズ保守年間で発生する開発・保守の外注費、社内工数
教育・サポート研修時間、問い合わせ対応にかかる担当者の工数
二重管理対応Excelとの突き合わせ、データ修正にかかる時間
追加ライセンス・アドオン部門追加や機能拡張のたびに発生する費用

これらを金額換算して積み上げると、ライセンス費だけを見ていたときとは異なる総コストの姿が見えてきます。特に人件費については、時給換算で概算するだけでも、想定以上の金額になっているケースが少なくありません。

洗い出した後にどう判断するか

結論:総コストが可視化できたら、運用改善で下げられる部分と、システムの構造自体に起因する部分を切り分けて検討します。

隠れコストの多くが運用ルールやカスタマイズの整理で解消できるのであれば、まずはそちらから着手するのが現実的です。一方で、標準機能とのミスマッチが根本原因になっている場合は、脱Salesforce完全ガイドで判断基準を確認しながら、自社の業務フローに合わせたシステムへの再設計を検討する余地もあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 隠れコストはどのくらいの規模になりますか? A. 企業の規模やカスタマイズの複雑さによって大きく異なるため、一概には言えません。まずは自社の項目ごとに棚卸しし、概算を出すところから始めることをおすすめします。

Q. 隠れコストを減らすには、まず何をすればよいですか? A. カスタマイズの棚卸しと、教育・サポートにかかっている工数の可視化から始めるのが現実的です。その結果をもとに、運用改善で対応できる範囲かどうかを判断します。

Q. ライセンス費だけで比較するのは危険ですか? A. はい。ライセンス費のみで費用対効果を判断すると、実際の総コストを見誤る可能性があります。人件費を含めた総コストで比較検討することをおすすめします。

Q. システムを作り直す場合、隠れコストはどう変わりますか? A. 自社の業務に合わせて設計することで、カスタマイズの保守や二重管理にかかるコストが減る傾向がありますが、開発費・保守運用費は別途発生します。

まとめ

Salesforceの隠れコストは、カスタマイズ保守・教育・二重管理対応といった形で、部門をまたいで人件費として発生しています。ライセンス費だけを見て費用対効果を判断するのではなく、これらのコストを洗い出したうえで、運用改善と再設計のどちらが自社に合っているかを検討することが重要です。

Irwin&co株式会社は、こうした総コストの可視化から自社に合ったシステム設計までを一気通貫で支援しています。開発費とアカウント数に依存しない保守運用費のみのシンプルな費用体系のもと、初回商談では実際に動くデモをご覧いただけます。自社の隠れコストを整理したいという場合は、お問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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