乱立したSaaSツールを整理する「SaaS Sprawl」対策
部署ごとに契約したSaaSが乱立して管理しきれないという悩みに向けて、SaaS Sprawlが起こる構造的な背景と、棚卸しから始める整理の進め方をコラム形式で解説します。
「気づいたら会社全体で何十個ものSaaSを契約していた」「同じような機能のツールを部署ごとに別々に契約している」——こうした状態は「SaaS Sprawl(サースの乱立)」と呼ばれ、クラウドサービスの導入が手軽になった結果として、多くの企業が直面している課題です。一つひとつのツールは便利でも、全体として見ると、重複した機能に重複したコストを払い続けている状態になっていることが少なくありません。
SaaS Sprawlは放置すると、コストの膨張だけでなく、データが各ツールに分散して全体像が見えなくなるという情報面の問題も引き起こします。この記事では、SaaS Sprawlがなぜ起こるのか、その構造と整理の考え方をコラム形式で紹介します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- SaaS Sprawlは部署ごとの個別最適な契約判断の積み重ねで起こる
- 放置するとコストの膨張とデータの分散という二重の問題が生じる
- 整理の第一歩は契約中のSaaSの棚卸しと重複機能の洗い出し
- 統合の選択肢にはツールの一本化と自社システムへの集約がある
SaaS Sprawlはなぜ起こるのか
結論:SaaS Sprawlが起こる主な原因は、各部署が自部署の課題を解決するために個別にSaaSを契約し、全社的な視点での重複チェックが行われないまま契約数が積み上がっていくことにあります。
クラウドサービスは無料トライアルやクレジットカード決済で手軽に導入できるため、情報システム部門を通さずに現場判断で契約が進みやすいという特徴があります。個々の契約判断自体は合理的でも、全社で見ると類似機能のツールが複数併存し、データも各ツールに分散してしまいます。こうした「借りるシステム」の構造的な特徴については、「借りるシステム」から「自社資産のシステム」へ:システム資産化の考え方でも触れています。
SaaS Sprawlが引き起こす二つの問題
結論:SaaS Sprawlを放置すると、契約数に比例してコストが膨らむ問題と、業務データが複数のツールに分散して全社的な把握が難しくなる問題の二つが同時に進行します。
| 問題 | 具体的な影響 |
|---|---|
| コストの膨張 | 重複機能への二重投資、使われていないライセンスの放置 |
| データの分散 | 顧客情報や案件情報が複数ツールに散在し、全体像を把握しづらい |
特にユーザー課金型のSaaSは契約数×人数分のコストが積み上がりやすく、組織が成長するほど負担が大きくなる構造があります。この費用構造についてはユーザー課金型SaaSの費用構造が組織成長と相性が悪い理由で詳しく解説しています。
為替リスクという見落とされがちな要因
結論:海外SaaSを多数契約している場合、為替変動によって円建てのコストが変わる為替リスクも、SaaS Sprawlの負担を見えにくくしている要因のひとつです。
契約時点では妥当に見えた費用も、為替の変動によって実質的な負担が増減することがあり、コスト管理を複雑にする一因になります。
整理の進め方:棚卸しから始める
結論:SaaS Sprawlの整理は、まず契約中の全SaaSを棚卸しし、利用状況と機能の重複を可視化するところから始めます。
契約中のツールを一覧化し、実際の利用頻度・利用者数・機能の重複度合いを整理すると、ほとんど使われていないのに契約だけ継続しているツールや、複数ツールで同じ機能を重複して使っているケースが見えてきます。
統合の選択肢:一本化と自社システムへの集約
結論:棚卸しの結果、重複が見つかった場合の選択肢は大きく、類似ツールを一本化する方法と、複数の機能を自社の業務システムに集約する方法の二つがあります。
一本化は既存のSaaSを乗り換える形で進めやすい一方、業務ごとに求める機能が異なる場合は、必要な機能だけを組み合わせた自社システムに集約する方が、長期的なコストと使いやすさの両面で有利になるケースもあります。自社資産としてシステムを構築する場合の投資回収の考え方は、スクラッチ開発の投資回収を約2年で実現する費用設計の考え方をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. SaaS Sprawlの棚卸しはどの部署が主導すべきですか? A. 情報システム部門が主導しつつ、各部署の実際の利用実態を把握している現場担当者を巻き込んで進めるケースが多いようです。
Q. すべてのSaaSを一本化すべきですか? A. 必ずしもそうとは限りません。専門性の高い機能に特化したSaaSはそのまま活用し、汎用的な機能が重複している部分から整理するという考え方が現実的です。
Q. SaaSの解約にはどのようなタイミングの注意点がありますか? A. 契約更新月を逃すと自動更新されてしまうケースが多いため、事前にスケジュールを把握しておくことが重要です。
Q. 整理した後、再び乱立するのを防ぐにはどうすればよいですか? A. 新規SaaS導入時に全社的な重複チェックを行う承認フローを設けるなど、運用ルールを整備することが再発防止につながります。
まとめ
SaaS Sprawlは、部署ごとの個別最適な契約判断が積み重なった結果として、多くの企業に共通して見られる構造的な課題です。放置するとコストの膨張とデータの分散という二つの問題が進行するため、契約中のSaaSを棚卸しし、重複を可視化した上で、一本化や自社システムへの集約といった選択肢を検討することが整理の第一歩になります。
Irwin&co株式会社は、乱立したSaaSツールの整理から、必要な機能を集約した自社システムの構築まで一貫してご相談を承っています。初回商談では実際に動くデモを無償で提示していますので、SaaSの整理に課題を感じている場合はお問い合わせからご相談ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
