「借りるシステム」から自社資産化への考え方

月額費用を払い続ける「借りるシステム」から、開発したシステムを自社の資産として積み上げていく「システム資産化」という考え方について、その意味と検討のポイントを解説します。

2026年08月30日
「借りるシステム」から自社資産化への考え方

「毎月払っているシステム利用料は、何年たっても『払い続けるもの』のままなのだろうか」——SaaSを長年利用してきた企業の経営者から、ふとこうした疑問が投げかけられることがあります。月額課金のシステムは、支払いを止めれば使えなくなる「借り物」であり、何年利用してもそれ自体が資産として積み上がっていくわけではありません。

一方で、自社の業務に合わせてシステムを開発し、その所有権を自社が持つ形にすれば、支払った開発費はソフトウェアという資産として積み上がっていきます。この違いに着目した考え方が「システム資産化」です。

この記事では、「借りるシステム」と「資産化するシステム」の違いを整理し、システム資産化という考え方をどのように検討すればよいかを解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • SaaSは「借りるシステム」であり、支払いを止めれば使えなくなるという性質を持つ
  • 自社開発したシステムは所有権が自社にあり、開発費はソフトウェア資産として積み上がっていく
  • 資産化のメリットが大きくなるのは、長期間・一定規模以上で使い続けることが見込まれる場合
  • 資産化には初期投資が必要になるため、投資回収の期間を見極めて判断することが重要

「借りるシステム」と「資産化するシステム」の違い

結論:SaaSは利用権を借りる契約であるのに対し、自社開発のシステムは開発費を投じて所有権を得る資産である、という根本的な違いがあります。

SaaSの月額課金は、あくまで「一定期間そのシステムを使う権利」に対する対価です。契約を続ける限りサービスを利用できますが、解約すればその時点で利用権は失われ、それまで支払ってきた費用が形として残ることはありません。いわば「システムを借り続けている」状態です。

これに対して、自社の業務に合わせて開発したシステムは、開発が完了した時点でソフトウェアという形の資産が自社に残ります。会計上も無形固定資産として計上されることが一般的で(具体的な会計処理は税理士・会計士への確認をおすすめします)、「使い続けるほど資産としての価値を実感しやすくなる」という点が、月額課金のSaaSとの大きな違いです。

システム資産化のメリットが大きくなる条件

結論:長期間・一定規模以上で使い続けることが見込まれる場合ほど、資産化のメリットは大きくなります。

システム資産化には初期の開発費という投資が必要になるため、短期間しか使わない、あるいは利用規模が小さいうちは、月額課金のSaaSのほうが総費用を抑えられる場合もあります。一方で、次のような条件に当てはまる企業では、資産化の検討価値が高まってきます。

条件理由
長期間(5年以上)の利用が見込まれる月額費用の累計が開発費を上回る時期が来やすい
利用人数が多い、または増加傾向にあるユーザー課金型SaaSでは人数に比例して費用が増え続ける
業務に合わせた独自機能が多いSaaSのカスタマイズに限界を感じやすい業務ほど自社開発のメリットが出やすい
システムを自社の競争力として位置づけたい汎用SaaSでは差別化しにくい業務プロセスがある場合

Irwin&co株式会社が支援した事例では、AI駆動開発により開発費が相場の約1/2程度に抑えられるケースが多く、その結果として投資回収を約2年で実現できる設計も可能になっています。投資回収の考え方についてはスクラッチ開発の投資回収を約2年で実現する費用設計の考え方で詳しく解説しています。

資産化を検討する際に注意したいこと

結論:初期投資が必要になる点と、開発後の保守運用体制をどう確保するかを事前に検討しておくことが重要です。

資産化には相応の初期費用がかかるため、「資産になるから無条件に良い」というわけではありません。投資回収までの期間、保守運用にかかる費用、将来的な機能追加のしやすさなど、総合的に検討する必要があります。特に保守運用体制は、開発会社に依存し続けるのか、自社である程度対応できるようにするのかによって、長期的なコスト構造が変わってきます。

また、AIが業務を実行する時代においては、システムの位置づけ自体が変化しつつあります。この考え方については「SaaS is dead」とは何か:AIが業務を実行する時代のシステム選びでも触れているので、あわせて参考にしてください。

どのように意思決定すればよいか

結論:現状のSaaS費用の将来推移と、資産化した場合の初期費用・保守費用を比較したシミュレーションを行うことが基本です。

意思決定の第一歩は、現状利用しているSaaSの費用が今後5年間でどれだけ積み上がるかを試算することです。そのうえで、自社開発した場合の開発費・保守運用費の見込みと比較し、どの時点で総費用が逆転するかを確認します。この比較が具体的であるほど、資産化を進めるかどうかの判断がしやすくなります。

Irwin&co株式会社では、初回の商談時点で実際に動くデモをお見せしながら、費用試算も含めて具体的に検討できる体制を整えています。実際の開発事例も参考にしながら、自社の場合にどの程度の投資回収が見込めるかを確認してみることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. システム資産化は必ず費用面で得になるのですか? A. 一概にそうとは言えません。利用期間が短い、あるいは利用規模が小さい場合は、SaaSのほうが総費用を抑えられるケースもあります。長期利用・大人数での利用が見込まれる場合ほどメリットが出やすい傾向があります。

Q. 資産化した場合、会計上どのように扱われますか? A. 一般的には無形固定資産として計上されるケースが多いですが、具体的な会計処理は契約内容や会計基準によって異なるため、税理士・会計士など専門家への確認をおすすめします。

Q. 資産化と補助金活用を組み合わせることはできますか? A. AI開発向けの補助金制度を活用できる場合があります。ただし申請可否や条件は制度ごとに異なるため、専門家や事務局への確認をおすすめします。

Q. 資産化した後の保守運用はどうすればよいですか? A. 開発会社に継続的に依頼する方法と、自社である程度対応できる体制を整える方法があります。長期的な費用構造に影響するため、開発時点から保守運用の方針を検討しておくとよいでしょう。

まとめ

「借りるシステム」であるSaaSと、「自社資産となるシステム」には、費用の性質そのものに根本的な違いがあります。長期間・一定規模以上での利用が見込まれる企業ほど、システム資産化のメリットは大きくなりやすく、投資回収の試算をもとに検討する価値があります。

Irwin&co株式会社は生成AI特化の受託開発を行っており、AI駆動開発により開発費を相場の約1/2程度に抑えながら、案件継続率95%という実績のもとでシステム資産化を支援しています。自社の場合の投資回収シミュレーションを確認したい場合は、お問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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