Salesforceのカスタムオブジェクト増殖が招く保守性低下と整理法

Salesforceで案件ごとにカスタムオブジェクトを追加し続けた結果、構造が複雑化し保守性が下がってしまう問題の背景と、整理・見直しを進める際の実践的な考え方を解説します。

2026年09月16日
Salesforceのカスタムオブジェクト増殖が招く保守性低下と整理法

「Salesforceに追加してきたカスタムオブジェクトが多すぎて、どれが何のために使われているか分からなくなった」——長年Salesforceを運用してきた企業の情報システム担当者から、こうした声が寄せられることがあります。導入当初はシンプルな構成だったものが、部門ごとの要望に応える形でカスタムオブジェクトやカスタム項目を追加し続けた結果、気づけば全体像を把握できる人が社内にいない、という状態に陥ってしまうケースは珍しくありません。

この状態は放置しておくと、新しい担当者への引き継ぎが困難になるだけでなく、些細な仕様変更のたびに影響範囲の調査に時間がかかるようになり、運用コストが年々膨らんでいきます。カスタムオブジェクトの増殖は、一つひとつの追加は合理的な判断であっても、積み重なることで構造全体の保守性を損なうという性質があります。

この記事では、Salesforceのカスタムオブジェクトが増殖してしまう背景と、整理・見直しを進める際の実践的な考え方を解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • カスタムオブジェクトの増殖は、部門ごとの個別最適を積み重ねた結果として起こることが多い
  • 増殖が進むと、仕様変更時の影響範囲調査にかかる工数が増大していく
  • 整理の第一歩は、利用状況の棚卸しと利用頻度の低いオブジェクトの洗い出しから始まる
  • 根本原因が業務フローとデータモデルのミスマッチにある場合は、再設計も選択肢の一つになる

なぜカスタムオブジェクトは増殖してしまうのか

結論:部門ごとの個別要望に応じて場当たり的にオブジェクトを追加していく運用が積み重なることで、全体としての整合性が失われていきます。

Salesforceは標準オブジェクトに加えて、業務に合わせたカスタムオブジェクトを柔軟に追加できる点が強みですが、この柔軟性が裏目に出ることもあります。ある部門の要望でオブジェクトを一つ追加し、別の部門でも似たような目的で別のオブジェクトを追加してしまう、といったことが繰り返されると、本来は一つにまとめられるはずのデータが複数のオブジェクトに分散してしまいます。追加時点では合理的な判断であっても、全体設計を俯瞰する役割が不在のまま進むと、構造は徐々に複雑化していきます。

増殖が招く具体的な問題

結論:カスタムオブジェクトの増殖は、保守コストの増大と属人化という2つの問題を引き起こします。

  • 仕様変更時の影響範囲調査に時間がかかる:似た目的のオブジェクトが複数存在すると、どこを直せば良いのか特定するだけで工数がかかる
  • 新しい担当者への引き継ぎが困難になる:オブジェクト同士の関連性や利用目的が文書化されておらず、属人的な知識に依存してしまう
  • レポート・ダッシュボードの作成が難しくなる:データが複数のオブジェクトに分散していると、レポート・ダッシュボード作成の難易度も上がる

これらの問題は、Salesforceの隠れコストの一因にもなっており、ライセンス費用には表れない形でコストを押し上げています。

整理を始める前の棚卸し

結論:整理に着手する前に、まずは現在存在するカスタムオブジェクトの利用状況を洗い出すことが欠かせません。

確認項目内容
利用頻度直近半年〜1年でレコードが作成・更新されているか
利用部門どの部門・担当者が実際に使用しているか
他オブジェクトとの関連参照関係やレポートでの利用有無
導入時の目的当初どのような課題を解決するために追加されたか

この棚卸しを行うことで、実質的に使われていないオブジェクトや、他のオブジェクトと統合できそうなものが見えてきます。利用状況が不明なオブジェクトを闇雲に削除すると、想定外の業務影響が出る可能性があるため、関係部門への確認は必須です。

整理の進め方:統合・廃止・維持の切り分け

結論:棚卸しの結果をもとに、統合できるもの・廃止できるもの・現状維持すべきものを切り分けて優先順位をつけることが現実的な進め方です。

似た目的で作られた複数のオブジェクトは統合を検討し、利用実態のないオブジェクトは関係部門の合意を得た上で廃止を検討します。一方で、権限設定・共有ルールが複雑に絡んでいるオブジェクトなどは、拙速に手を入れると影響範囲が読みにくいため、優先順位を下げて慎重に進める判断も必要です。

構造的な問題であれば再設計も選択肢に

結論:カスタムオブジェクトの増殖が、業務フローとデータモデルの根本的なミスマッチから生じている場合は、部分的な整理では限界があり、再設計を検討する余地があります。

個別の整理を重ねても複雑さが解消されない場合、そもそも自社の業務フローに対してデータモデルの設計思想が合っていない可能性があります。脱Salesforce完全ガイドで紹介しているような判断基準を参考にしながら、部分整理で対応できる範囲か、業務フローに合わせた再設計が必要な範囲かを見極めることが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. 使われていないカスタムオブジェクトはすぐに削除してよいですか? A. 関係部門への確認なしに削除するのはリスクがあります。レポートや他オブジェクトからの参照が残っている場合があるため、影響範囲を確認してから判断してください。

Q. カスタムオブジェクトの整理はどのくらいの頻度で行うべきですか? A. 明確な基準はありませんが、年に一度程度、利用状況の棚卸しを行う企業が多い印象です。追加のたびに全体設計を見直す運用ルールを設けることも有効です。

Q. 整理してもすぐにまた増えてしまいそうです。どうすればよいですか? A. オブジェクトの新規追加時に、既存オブジェクトで代替できないかを確認するレビュー工程を設けることで、増殖を抑えやすくなります。

まとめ

Salesforceのカスタムオブジェクトの増殖は、部門ごとの個別最適が積み重なった結果として起こりやすく、放置すると保守コストの増大と属人化を招きます。まずは利用状況の棚卸しから始め、統合・廃止・維持を切り分けて整理を進めることが基本ですが、業務フローとの根本的なミスマッチが原因であれば、再設計も選択肢に入ってきます。

Irwin&co株式会社は、こうした複雑化したデータ構造の整理から、自社の業務フローに合わせたシステムの再設計までを支援しています。現状の構造にお悩みの場合は、お問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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