一部部署しか使わない「片肺運用」システムの解消法

せっかく導入したシステムが一部の部署でしか使われず、残りの部署はExcelや紙のままという「片肺運用」の状態に陥る原因と、解消に向けた実践的な進め方を解説します。

2026年09月17日
一部部署しか使わない「片肺運用」システムの解消法

「営業部は新しいシステムを使っているのに、管理部門はいまだにExcelで台帳を管理している」——複数の部署が関わる業務システムを導入した企業から、こうした声が寄せられることがあります。全社導入を目指して開発・契約したはずのシステムが、実際には一部の部署でしか使われず、残りの部署は従来のやり方を続けてしまう状態です。

この「片肺運用」の状態は、単に利用率が低いというだけでなく、部署間でデータの持ち方がずれてしまい、全社で状況を把握したいときに情報をつなぎ合わせる作業が発生し続けるという問題を引き起こします。導入時のコストは全社分を想定していたにもかかわらず、実際の効果は一部にしか及んでいない、という状態が長期化してしまうケースも見られます。

この記事では、片肺運用が起きる背景と、解消に向けた現実的な進め方について解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • 片肺運用は部署ごとの業務フローや温度差を考慮せずに一律導入した場合に起こりやすい
  • 放置すると部署間のデータ連携コストが恒常的にかかり続ける構造的な問題になる
  • 解消の第一歩は使われていない部署の業務フローと不使用の理由を正確に把握すること
  • 原因によっては画面・機能の見直しが必要なケースと、運用ルールの見直しで済むケースがある

片肺運用はなぜ起きるのか

結論:全部署に同じ画面・同じ運用ルールを当てはめようとした結果、一部の部署の業務フローに合わず、使われない状態が固定化してしまうことが主な原因です。

システム導入の企画段階では、主要な部署の業務フローを中心にヒアリングして仕様を固めることが多く、周辺的な業務を担う部署の細かな事情が反映されないまま設計が進んでしまうことがあります。結果として、主要部署にとっては便利なシステムでも、別の部署にとっては「自分たちの業務のやり方と合わない」ものになり、使われないまま従来のExcelや紙の運用に戻ってしまう、という構図が生まれます。

片肺運用を放置すると起きる問題

結論:片肺運用は一時的な非効率ではなく、部署間のデータ連携コストが恒常的に発生する構造的な問題に発展します。

  • 全社データの集計に手作業が必要になる:システムを使っている部署とExcelの部署のデータ形式が異なり、突き合わせに時間がかかる
  • 経営判断に使う数字の信頼性が下がる:一部のデータが最新化されず、レポートやダッシュボードに反映されない
  • システムの投資効果が限定的になる:全社分のコストを見込んで導入したにもかかわらず、実際の効果は一部部署にしか及ばない

これらの問題は、経営ダッシュボードが形骸化する理由にも通じるところがあり、データの一部が欠けたままでは、どれだけ画面をきれいに作っても実態を正しく反映できません。

使われていない理由を正確に把握する

結論:解消に向けた最初のステップは、使われていない部署がなぜ使っていないのかを、思い込みではなく実際のヒアリングで正確に把握することです。

「単に慣れていないだけ」「業務フロー自体が合っていない」「機能が足りない」など、不使用の理由は部署によって様々です。原因を確かめずに「使うように」と指示だけを強めても、業務フローと合っていない場合は定着しません。現場の声を拾う仕組みを使って、使わない理由を具体的な業務手順のレベルまで掘り下げてヒアリングすることが重要です。

原因別に見る解消アプローチ

結論:不使用の原因が業務フローとの不一致にある場合は画面・機能の見直しが必要になりますが、単に運用ルールが浸透していないだけであれば、周知や教育で解消できる可能性があります。

原因のタイプ主な対応
業務フローと機能が合っていない該当部署向けの画面・入力項目の見直し
入力の手間が従来より増えている入力項目の簡素化、AIによる自動入力の検討
運用ルールが周知されていない部署ごとの説明会・運用マニュアルの整備
単純に移行の優先度が低かった移行スケジュールの再設定、経営層からの後押し

原因を切り分けたうえで、現場が本当に使うCRM画面のつくり方のように、部署ごとの業務の実情に合わせた画面設計に近づけていくことが、片肺運用の解消につながります。

全社定着のための進め方

結論:片肺運用の解消は一度の改修で終わるものではなく、部署ごとの状況を確認しながら段階的に定着を進めていく取り組みとして捉える必要があります。

まずは利用率が低い部署を一つ選び、原因の把握から画面・運用の見直しまでを一巡させ、その成功パターンを他部署にも展開していくという進め方が現実的です。全部署を一斉に見直そうとすると負荷が大きくなりすぎるため、優先度の高い部署から着実に進めることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q. 片肺運用に気づくきっかけは何ですか? A. 部署別の利用率やログイン頻度を確認したときに、極端な差があることに気づくケースが多いです。定期的に利用状況を確認する仕組みを持っておくことが早期発見につながります。

Q. 使わない部署に利用を強制するのは有効ですか? A. 業務フローと合っていない状態のまま利用を強制すると、形だけの入力になり、データの質が下がってしまう可能性があります。原因を把握したうえで対応することをおすすめします。

Q. 片肺運用の解消にはどのくらいの期間がかかりますか? A. 原因や部署の規模によって異なりますが、ヒアリングから画面見直し、定着確認までを含めると、部署ごとに数ヶ月単位で見ておくのが現実的です。

まとめ

片肺運用は、一律の仕様で全社導入を進めた際に、一部の部署の業務フローとのミスマッチが解消されないまま固定化してしまう現象です。放置すると部署間のデータ連携コストがかかり続けるため、まずは使われていない理由を正確に把握し、原因に応じて画面・機能の見直しや運用の周知を進めることが解消への道筋になります。

Irwin&co株式会社では、部署ごとの業務フローの違いを踏まえたシステム設計・改修を支援しています。一部の部署で使われなくなってしまったシステムの見直しを検討している場合は、お問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

お問い合わせ

生成AI活用やAI開発について、お気軽にご相談ください。

まずは相談する