現場の「使いにくい」を拾う仕組み:改善ヒアリング設計

システムへの不満が現場から自然には上がってこない、上がってきても対応が場当たり的になりがちという悩みに向けて、改善ヒアリングを仕組みとして設計する考え方と優先順位づけの進め方を解説します。

2026年09月11日
現場の「使いにくい」を拾う仕組み:改善ヒアリング設計

「システムへの不満は聞くけれど、誰に・いつ・どう聞けばいいのか決まっていない」「気づいたときには現場がExcelに戻っていた」——システムを導入した後、現場の声を拾う仕組みが整っていないという相談は少なくありません。不満そのものは日々の会話の中に存在しているのに、それを拾い上げて改善につなげる経路がないために、現場の小さな不便が放置され続けるケースが多く見られます。

システム改善は一度作って終わりではなく、運用しながら現場の声を継続的に拾い、優先順位をつけて反映していくプロセスがあってはじめて機能します。この記事では、現場の「使いにくい」を仕組みとして拾い上げるヒアリング設計の考え方を解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • 現場の不満は待っていても上がってこないことが多く、能動的に拾う仕組みが必要
  • ヒアリングは属人的な聞き取りではなく定期的な仕組みとして設計する
  • 集めた声は優先順位づけの基準を持って改善に反映する
  • 改善サイクルを回すには**現場への「反映結果のフィードバック」**が欠かせない

なぜ現場の声は自然には上がってこないのか

結論:現場担当者は日々の業務に追われており、不満があっても「言っても変わらない」「誰に言えばいいか分からない」という理由で声を上げないことが多いためです。

システム担当者や経営層は「困っていれば言ってくるはず」と考えがちですが、現場では小さな不便を都度回避する工夫(独自のExcel管理やメモの併用など)で乗り切ってしまい、それが定着すると不満自体が表面化しなくなります。こうした状態が進むと、CRMを導入したはずなのに現場がExcelに戻ってしまう「Excel回帰」と呼ばれる状態に陥りやすくなります。この現象の構造についてはCRMを入れたのに現場がExcelに戻る「Excel回帰」の構造と対策で詳しく解説しています。

ヒアリングを仕組みとして設計する

結論:ヒアリングは特定の担当者が気づいたときに聞く属人的な活動ではなく、頻度・対象・方法を決めた定期的な仕組みとして設計する必要があります。

設計要素考え方の例
頻度月次の短時間ヒアリング、または四半期ごとのアンケート
対象部署・役職を横断して偏りなく選定する
方法個別インタビュー、チャットでの常設窓口、簡易アンケートの併用
記録誰が・いつ・何を言ったかを蓄積し、傾向を追えるようにする

一度きりのアンケートで満足するのではなく、継続的に同じ形式で声を集めることで、改善が進んでいるかどうかの経年比較もできるようになります。

ヒアリング内容をシステムに落とし込む前の整理

結論:集めた声をそのまま要望として実装するのではなく、背景にある業務上の課題を一段掘り下げてから設計に反映することが重要です。

「このボタンが分かりにくい」という表層的な声の裏には、「そもそもこの操作をなぜこの画面でしているのか」という業務フロー自体の課題が隠れていることがあります。現場が本当に使いやすいと感じる画面設計を意識することが重要です。

集めた声の優先順位をどうつけるか

結論:すべての要望に同時に対応することは現実的ではないため、影響範囲(対象人数)と業務への支障度合いという2軸で優先順位をつける方法が実務的です。

声の数が多い順に対応するのではなく、「毎日発生する不便」と「月に一度しか発生しないが致命的な不便」を区別し、業務全体への影響を基準に優先順位を決めることで、限られた開発リソースを効果的に配分できます。この優先順位づけの考え方は、小さく作って現場で直す:業務システムの段階的開発のすすめのように段階的にシステムを育てていく開発の進め方とも相性がよいアプローチです。

フィードバックのループを閉じる

結論:ヒアリングで得た声がどう反映されたか、あるいはなぜ反映しなかったかを現場に伝えることで、次回以降のヒアリングの質が上がります。

声を上げても何も変わらないという経験が積み重なると、現場は協力を続けなくなります。改善サイクルを継続させるには、対応結果を定期的に共有し、「声を上げれば変わる」という実感を現場に持ってもらうことが欠かせません。

よくある質問(FAQ)

Q. ヒアリングはどのくらいの頻度で行うのが適切ですか? A. 業務の繁閑や組織規模によりますが、月次の簡易ヒアリングと四半期ごとの詳細アンケートを組み合わせるケースが多いようです。

Q. ヒアリングと並行して、日々の声を拾う方法はありますか? A. チャットツールに常設の要望窓口を設けたり、会議メモや商談メモから自動的に課題を抽出する仕組みを組み合わせる方法もあります。詳しくは営業の活動記録を手入力から解放する:会議メモ・音声からのAI自動入力をご覧ください。

Q. 集めた声をすべてシステム改修に反映する必要がありますか? A. 必ずしもその必要はなく、運用ルールの見直しで解決できるケースもあります。声の背景を掘り下げた上で、システム改修が適切かどうかを見極めることが大切です。

Q. ヒアリングの仕組みづくり自体を外部に依頼することはできますか? A. ヒアリング設計から要件定義への落とし込みまで含めて支援するケースもあります。

まとめ

現場の「使いにくい」は放置すると業務の非効率やシステム離れにつながりますが、待っているだけでは自然には上がってきません。頻度・対象・方法を決めた仕組みとしてヒアリングを設計し、集めた声を優先順位づけして反映し、結果を現場にフィードバックするというサイクルを回すことで、システムを使い続けてもらえる状態を維持できます。

Irwin&co株式会社では、現場ヒアリングの設計から業務システムへの反映まで一貫してご相談いただけます。初回商談では実際に動くデモを無償で提示していますので、現場の声を拾う仕組みづくりに課題を感じている場合はお問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

お問い合わせ

生成AI活用やAI開発について、お気軽にご相談ください。

まずは相談する