現場が本当に使うCRM画面のつくり方:「最大公約数」設計の実践法
現場に定着するCRM画面をどう設計するか、「最大公約数」という考え方をもとに、項目の使用頻度の棚卸しからメイン画面の定義、業種差の吸収までの実践的な進め方をステップ形式で解説します。
「せっかくCRMを導入したのに、現場が入力してくれない」——この悩みの原因の多くは、機能そのものではなく画面設計にあります。標準機能をそのまま使うと、あらゆる業種・業務パターンに対応できるよう項目が用意されている分、自社の営業現場にとっては「使わない項目まで表示されている」「本当に必要な情報が埋もれている」状態になりがちです。
この課題を解決する考え方のひとつが「最大公約数」設計です。すべての利用者・すべての業務パターンを網羅しようとするのではなく、大多数の現場担当者が日常的に使う項目・操作に絞り込み、そこに最適化した画面をつくるという発想です。
この記事では、最大公約数設計の考え方と、実際にCRM画面を設計する際の具体的な進め方をHowTo形式で解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 「最大公約数」設計とは、全利用者を100%満足させる網羅性ではなく、大多数が日常的に使う項目に絞り込む考え方
- 項目を絞り込む際は、入力頻度と参照頻度の両方を基準に優先順位をつける
- 例外的な業務パターンは、別画面や補足入力欄で吸収する設計が現実的
- 画面設計は一度作って終わりではなく、利用状況を見ながら継続的に見直すことが定着の鍵になる
ステップ1:入力項目を「使用頻度」で棚卸しする
結論:まずは既存システムやExcelで実際に使われている項目を洗い出し、使用頻度でグルーピングすることから始めます。
CRM画面設計の第一歩は、機能一覧から考えるのではなく、現場の実際の入力・参照データを棚卸しすることです。具体的には、次のような分類で項目を整理します。
| 分類 | 内容 | 画面上の扱い |
|---|---|---|
| 常時使用 | ほぼ全ての商談で入力・参照される項目 | メイン画面に常時表示 |
| 一部業務で使用 | 特定の商談パターンでのみ必要な項目 | 折りたたみ・タブで分離 |
| ほぼ未使用 | 過去の名残で残っているが実質使われていない項目 | 廃止を検討 |
この棚卸しを行わずに「あった方が良さそうな項目」を積み上げていくと、結果的に入力項目が多すぎる画面になってしまいます。
ステップ2:「最大公約数」の画面を定義する
結論:常時使用される項目だけでメイン画面を構成し、それ以外は必要な人だけがアクセスする補助的な導線に配置します。
最大公約数設計の核心は、「全員が全機能を見える状態」ではなく「大多数が日常的に使う情報だけがまず目に入る状態」をつくることです。例えば、次のような設計方針が考えられます。
- メイン画面には常時使用項目のみを配置し、視認性を最優先する
- 一部業務でのみ必要な項目は、タブや折りたたみセクションに格納する
- 例外的な入力ニーズは、自由記述の補足欄で吸収し、個別の項目を増やさない
この設計方針により、大多数の現場担当者にとっては「シンプルで迷わない画面」になり、少数の例外的なニーズにも別の導線で対応できます。
ステップ3:業種・拠点ごとの差異を吸収する
結論:業種や拠点によって業務フローに差がある場合、無理に1つの画面に統一せず、共通部分と可変部分を切り分けて設計します。
複数の拠点や事業部で1つのCRMを共用する場合、業務フローの細かな違いをすべて1つの画面に反映しようとすると、画面が複雑化してしまいます。共通して必要な情報(顧客名、案件ステータスなど)と、拠点・業種ごとに異なる情報(不動産業であれば物件情報など)を切り分け、共通部分は統一画面、可変部分は拠点別の追加項目として設計するアプローチが現実的です。
ステップ4:現場を巻き込みながら検証する
結論:画面設計は一度で完成させようとせず、実際の利用者を巻き込んだ検証を繰り返すことで精度が上がります。
最大公約数を机上だけで判断すると、実際の現場感覚とずれてしまうことがあります。実機のデモ画面を使って現場担当者に触ってもらい、フィードバックを反映するプロセスを設けることが重要です。現場を巻き込む要件定義のやり方でも触れていますが、要件定義の段階から現場の声を取り入れることで、画面設計の精度は大きく向上します。
Irwin&co株式会社では、要件定義の初期段階から実際に動くデモをお見せしながら画面設計を進める方法をとっており、机上の設計だけでは見えない使い勝手のズレを早期に発見できるようにしています。
よくある質問(FAQ)
Q. 最大公約数設計だと、少数派のニーズが切り捨てられませんか? A. メイン画面から外すだけで、機能自体を削除するわけではありません。補助的な導線(タブ・折りたたみ・自由記述欄)で対応することで、少数派のニーズも吸収できます。
Q. 既存のSalesforceなどのCRM上でも最大公約数設計は可能ですか? A. 画面レイアウトのカスタマイズ機能を使えば、ある程度は実現可能です。ただし、標準機能の制約でカスタマイズに限界を感じる場合は、スクラッチでの再設計を検討するケースもあります。
Q. 画面設計にはどれくらいの期間がかかりますか? A. 項目の棚卸しから検証まで含めると、業務の複雑さによって幅がありますが、要件定義の段階で現場を巻き込むことで手戻りを減らせます。
Q. 社内にUI設計の専門知識がなくても進められますか? A. 開発会社と一緒に現場ヒアリングを行いながら進めることで、専門知識がなくても最大公約数の考え方に沿った設計を進めることができます。
まとめ
現場に定着するCRM画面をつくるには、全員・全機能を網羅しようとするのではなく、大多数が日常的に使う項目に絞り込む「最大公約数」の考え方が有効です。使用頻度による棚卸し、メイン画面の定義、業種・拠点差の切り分け、現場を巻き込んだ検証というステップを踏むことで、画面設計の精度を高めることができます。
Irwin&co株式会社は、現場ヒアリングから画面設計、開発までを一貫して支援しており、案件継続率95%という実績のもと、自社の業務フローに合わせたCRM画面づくりをサポートしています。画面設計にお悩みの場合は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
