システム保守契約のSLA(サービスレベル合意)の決め方
システム保守契約におけるSLA(サービスレベル合意)の決め方について、障害対応時間や対応範囲の設定方法を中心に解説します。
「保守契約を結んだが、障害発生時の対応時間について具体的な取り決めがなく、不安を感じている」「保守の対応範囲がどこまでなのか、契約書を読んでも分かりにくい」——システム開発後の保守契約を検討する企業の担当者から、こうした相談が寄せられることがあります。SLA(サービスレベル合意)は保守の品質を事前に取り決める重要な要素ですが、具体的にどう設定すればよいか分からないまま契約してしまうケースも少なくありません。
SLAは一律の基準があるわけではなく、システムの重要度や業務への影響度に応じて、自社に合った水準を設定する必要があります。この記事では、システム保守契約のSLAの決め方について解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 障害対応の開始時間・復旧目安時間を明確にすることが、SLA設定の基本
- システムの重要度に応じて対応水準を変えることで、過剰な保守費用を避けやすくなる
- 対応範囲(バグ修正・軽微な改修・問い合わせ対応)の線引きを事前に確認しておく
- 当社はアカウント数に依存しない開発費+保守運用費のみの費用体系を採用している
障害対応の開始時間・復旧目安を明確にする
結論:SLAの中核となるのは、障害が発生した際にどれくらいの時間で対応を開始し、どれくらいの時間で復旧を目指すかという目安を明確にすることです。
「対応します」という抽象的な取り決めだけでは、実際に障害が起きた際の期待値がベンダーと発注者の間でずれてしまいます。営業時間内の対応か24時間対応か、一次対応の開始目安は何時間以内か、といった具体的な数値を契約時にすり合わせておくことで、障害発生時の混乱を防ぎやすくなります。
業務影響度に応じた優先度設定
すべての障害を同じ優先度で扱うのではなく、業務が完全に停止する致命的な障害と、一部機能に軽微な不具合がある場合とで、対応時間の目安を分けて設定することが現実的です。
システムの重要度に応じて対応水準を変える
結論:SLAの水準は高ければ高いほど安心ではありますが、対応水準を上げるほど保守費用も高くなる傾向があるため、システムの重要度に応じたバランスを取ることが重要です。
基幹業務に直結するシステムには手厚い保守水準を設定する一方、社内の補助的なツールには簡易な保守水準にとどめるなど、システムごとにメリハリをつけることで、保守費用全体を適正な水準に抑えやすくなります。保守運用費の内訳や抑え方についてはシステム開発後の保守運用費はいくらかかるか:内訳と抑え方で詳しく解説しています。
保守の対応範囲を明確に線引きする
結論:保守契約における対応範囲は、バグ修正・軽微な改修・問い合わせ対応のどこまでが含まれるのかを事前に明確にしておくことで、契約後の「対応してもらえると思っていた」という認識齟齬を防ぎやすくなります。
保守契約には、既存機能の不具合修正は含まれていても、新機能の追加は別途見積もりとなるケースが一般的です。どこまでが保守費用の範囲内で、どこからが追加開発費となるのか、契約時に具体例を挙げながら確認しておくことが望ましいといえます。保守運用費の内訳や抑え方についてはシステム開発後の保守運用費はいくらかかるか:内訳と抑え方で詳しく解説しています。
責任分界点の明確化
バグと仕様変更の境界線が曖昧なまま運用すると、都度の交渉にコストがかかります。受託開発における責任分界点の決め方については受託開発のバグ・不具合対応における責任分界点の決め方で解説しています。
AIを活用した保守体制という選択肢
結論:AIを活用した開発体制であれば、障害の予兆検知や軽微な不具合の自動検出により、保守対応のスピードと質を両立させやすくなるケースがあります。
従来型の保守体制では、障害の発見が利用者からの問い合わせに依存しがちですが、AIによる監視や出力ログの分析を組み込むことで、問題を早期に検知できる可能性が高まります。
よくある質問(FAQ)
Q. SLAは契約書に必ず明記すべきですか? A. 口頭での認識合わせだけでは後からトラブルになりやすいため、対応時間や対応範囲は契約書や合意文書に明記しておくことをおすすめします。
Q. 小規模なシステムでもSLAを設定する必要がありますか? A. システムの業務への影響度によります。影響度が小さいシステムであれば、簡易な対応水準にとどめることでコストを抑えられるケースもあります。
Q. SLAの水準は契約後に見直すことはできますか? A. 運用開始後に業務の重要度が変化することもあるため、定期的に見直す運用にしておくと柔軟に対応しやすくなります。
Q. 保守契約に関する法的な取り決めについて相談できますか? A. 契約内容の法的な妥当性については、必要に応じて専門家への確認をおすすめします。
まとめ
システム保守契約のSLAを決める際は、障害対応の開始時間・復旧目安を明確にし、システムの重要度に応じて対応水準にメリハリをつけ、保守の対応範囲を事前に線引きしておくことが重要です。契約時の取り決めが曖昧なまま運用を始めると、障害発生時に認識齟齬が生じやすくなるため、具体的な数値や事例をもとにすり合わせておくことをおすすめします。
Irwin&co株式会社は、開発費と保守運用費のみのシンプルな費用体系で、アカウント数に依存しないシステム開発を提供しています。AI駆動開発により開発費は相場の約1/2に抑えられ、案件継続率95%を支える丁寧な保守運用体制を整えていますので、保守契約の内容を見直したい場合は開発事例もあわせてご覧のうえ、お問い合わせからご相談ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
