SaaS契約更新前にやるべき準備とは
「気づいたら自動更新されていた」を防ぐため、SaaS契約の更新前に確認しておきたい利用状況の棚卸しや代替案の検討など、準備しておくべきポイントを解説します。
「気づいたら自動更新の時期が過ぎていて、来年も同じ費用を払うことが決まってしまった」——SaaSを長年利用している企業からは、こうした声が聞かれることがあります。年間契約のSaaSは更新月の一定期間前に解約の意思表示をしないと自動更新される仕組みが一般的で、見直しのタイミングを逃すと、不本意なまま高額な契約を継続することになりかねません。
本来であれば、更新のタイミングは「このまま使い続けるべきか」を立ち止まって考える貴重な機会です。しかし日々の業務に追われる中で、更新月を意識できていない企業も少なくありません。
この記事では、SaaS契約を「不本意なまま更新」してしまう事態を避けるために、更新前にやっておきたい準備を整理して解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 多くのSaaSは自動更新が前提であり、解約意思表示の期限を過ぎると意図せず契約が継続する
- 更新前には利用状況の棚卸し・費用の将来推移・代替案の検討の3点を確認しておくことが重要
- 検討には一定の時間がかかるため、更新月の3〜6ヶ月前から準備を始めるのが現実的
- 「更新するか・しないか」の判断材料をそろえておくことで、不本意な継続を避けやすくなる
なぜSaaS契約は「不本意な更新」が起こりやすいのか
結論:年間契約という仕組みと、日々の業務の忙しさが重なることで、見直しのタイミングを逃しやすい構造になっているためです。
多くのSaaSは年間契約が基本で、契約書には「更新月の◯ヶ月前までに解約意思を示さない場合は自動更新される」といった条項が含まれていることが一般的です。この条項自体は珍しいものではありませんが、担当者が異動した、更新月をカレンダーに登録していなかった、といった理由で見直しの機会を逃してしまうケースが現場ではよく聞かれます。結果として、費用や機能に不満があっても、次の更新月まで契約を続けざるを得ない状況が生まれます。
更新前に確認すべき利用状況の棚卸し
結論:まずは「実際にどの機能を、誰が、どれだけ使っているか」を可視化することが準備の出発点になります。
契約更新を検討する際にありがちな失敗は、費用だけを見て「高いから解約したい」「仕方なく続ける」のどちらかに飛びついてしまうことです。その前に、契約しているライセンス数のうち実際にログインしているユーザーはどれくらいか、よく使われている機能とほとんど使われていない機能は何かを棚卸しすることが重要です。棚卸しの具体的な進め方はシステム乗り換え前の「棚卸し」実践法でも解説しています。
棚卸しの結果、契約しているライセンス数に対して実際の利用率が低いことが分かれば、それだけでもプラン変更やライセンス数の見直しによるコスト削減につながる可能性があります。
費用の将来推移を試算しておく
結論:現在の契約を続けた場合、今後3〜5年でどれだけの費用が積み上がるかを試算しておくと、更新の判断がしやすくなります。
ユーザー課金型のSaaSは、組織の成長に伴って利用人数が増えるほど費用も比例して増えていく傾向があります。現在の費用だけでなく、「今後人数が増えたらいくらになるか」まで試算しておくことで、更新を続けた場合の総費用感がつかみやすくなります。Salesforceを例にした企業規模別の試算はSalesforceを続けるといくらかかるか:企業規模別の5年コスト試算で紹介しているので、自社の試算の参考にしてください。
代替案を検討し、比較できる状態にしておく
結論:更新か解約かを判断するには、少なくとも1つは代替の選択肢を具体的に検討し、比較できる状態にしておくことが望ましいです。
「今のSaaSに不満はあるが、他にどんな選択肢があるか分からない」という状態では、結局は流されるように更新してしまいがちです。自社の業務に合わせたシステムを新たに開発する選択肢や、他のSaaSへの乗り換えなど、代替案を1つでも具体的に検討しておくことで、更新のタイミングで「続ける」「変える」を自分たちの意思で選べるようになります。解約前の実務的な準備についてはSaaS解約前のチェックリスト:契約更新月から逆算する準備スケジュールにまとめています。
準備のスケジュール感
結論:利用状況の棚卸しから代替案の検討まで一定の時間がかかるため、更新月の3〜6ヶ月前には準備を始めるのが現実的です。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 更新月の6ヶ月前 | 利用状況の棚卸しを開始 |
| 更新月の4〜5ヶ月前 | 費用の将来推移を試算、代替案の情報収集 |
| 更新月の2〜3ヶ月前 | 代替案の具体的な検討・見積取得 |
| 更新月の1〜2ヶ月前(解約期限前) | 更新するか解約するかの最終判断 |
特に代替案として自社開発を検討する場合は、要件定義から開発完了までに一定の期間を要するため、早めに情報収集を始めておくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 解約の意思表示はいつまでに行う必要がありますか? A. SaaSごとに契約条件が異なるため一概には言えません。契約書やベンダーとの契約内容を確認し、解約意思表示の期限を事前に把握しておくことをおすすめします。
Q. 利用率が低いことが分かった場合、まず何をすればよいですか? A. すぐに解約を決断する前に、プラン変更やライセンス数の見直しで費用を抑えられないか、ベンダーに相談してみることも選択肢の一つです。そのうえで、自社開発などの代替案とも比較検討することをおすすめします。
Q. 代替案の検討にはどれくらいの期間が必要ですか? A. 検討する範囲によって異なりますが、情報収集から見積取得まで含めると数ヶ月単位の時間がかかることが一般的です。更新月から逆算して早めに動き始めることをおすすめします。
Q. 自社開発を検討する場合、まず何をすればよいですか? A. 現状のSaaSでどの機能を使っているか、どこに不満があるかを整理したうえで、開発会社に相談し、実際に動くデモを見ながら検討する方法があります。
まとめ
SaaS契約の「不本意な更新」は、更新のタイミングを見直しの機会として活用できていないことが主な原因です。利用状況の棚卸し、費用の将来推移の試算、代替案の検討という3つの準備を更新月の3〜6ヶ月前から進めておくことで、自分たちの意思で更新可否を判断できるようになります。
Irwin&co株式会社は、SaaSからの乗り換えを検討する企業に対して、現状の費用試算から代替となる自社開発システムの提案まで、初回の商談で動くデモをお見せしながらご案内しています。契約更新のタイミングを控えている方は、お問い合わせから早めにご相談ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
