API連携を前提にした段階的な移行アーキテクチャの設計

システム移行を一度に完結させず段階的に進めたい企業向けに、API連携を軸にした新旧システムの共存アーキテクチャの考え方と設計のポイントを解説します。

2026年09月12日
API連携を前提にした段階的な移行アーキテクチャの設計

「システムを一気に全部入れ替えるのはリスクが大きい。でも部分的に置き換える方法が分からない」——大規模なシステムを抱える企業ほど、こうした悩みを抱えがちです。全面刷新は業務影響が大きく、かといって古いシステムをそのまま使い続けるのも限界がある、という板挟みの状態です。

この課題への現実的な解決策のひとつが、API連携を軸にした段階的な移行アーキテクチャです。新旧システムを一度にすべて入れ替えるのではなく、API連携を通じて共存させながら、機能単位で少しずつ置き換えていくという考え方です。

この記事では、API連携を前提にした段階的な移行アーキテクチャの基本的な考え方と、設計時に押さえておきたいポイントを解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • 段階的移行は新旧システムをAPIで連携させて共存させることが基本の考え方
  • 一度に全部を入れ替える「ビッグバン移行」より、業務影響とリスクを抑えやすい
  • 設計の要は、データの正となるシステムをどちらに置くかを明確にすること
  • 移行完了後は中間の連携層を整理・撤去する計画もあわせて用意しておく

なぜ段階的な移行アーキテクチャが必要なのか

結論:全社的な基幹システムを一度にすべて入れ替える「ビッグバン移行」は、業務影響とプロジェクトリスクの両方が大きくなりやすいため、段階的な移行アーキテクチャが現実的な選択肢になります。

大規模なシステムほど、関連する業務プロセスや連携先システムが多く、一度にすべてを検証しきることは難しくなります。段階的な移行であれば、機能単位で影響範囲を区切りながら進められるため、仮に問題が発生しても局所的な対応で済みます。新旧システムの並行稼働と切り戻し計画の基本的な考え方は、新旧システムの並行稼働と切り戻し計画の立て方でも解説しています。

API連携を軸にした共存アーキテクチャの考え方

結論:段階的移行では、新旧システムをAPIで連携させ、それぞれが持つデータや機能を必要に応じて相互に参照できる状態をつくることが基本の設計方針になります。

新システムへ移行済みの機能は新システム側で処理し、まだ移行していない機能は旧システム側で処理を続けながら、両者をAPIでつなぐことで、業務全体としては一貫した動きに見えるようにします。この構成により、利用者は移行の進捗状況を意識することなく業務を続けられます。

データの正となるシステムを明確にする

結論:API連携による共存構成では、あるデータについてどちらのシステムを「正」とするかを明確に決めておかないと、データの不整合が発生しやすくなります。

同じ顧客情報や案件情報が新旧両方のシステムに存在する状態が続くと、更新のタイミングによってはどちらが最新か分からなくなるリスクがあります。移行フェーズごとに、どのデータのマスターをどちらのシステムに置くかを設計段階で明文化しておくことが重要です。取引先や案件のデータモデル設計そのものについては、取引先と案件のデータモデル設計:1対1の紐づけが破綻するケースと対処も参考になります。

移行フェーズの区切り方

結論:機能単位・部署単位・データドメイン単位など、業務への影響が小さい単位で移行フェーズを区切ることで、各フェーズのリスクを抑えられます。

区切り方特徴
機能単位特定の業務機能(見積作成など)から先行して移行
部署単位影響範囲の小さい部署から先行して移行
データドメイン単位顧客情報・案件情報など、データの種類ごとに移行

どの区切り方が適しているかは、業務の依存関係やシステム構成によって異なります。作り込んだカスタマイズが多いシステムほど、一括での移行は難しくなるため、作り込んだカスタマイズは移行できるか:再現・簡素化・廃止の切り分け方で解説しているような切り分けもあわせて検討する必要があります。

移行完了後の連携層の整理

結論:段階的移行の完了後は、共存のために構築したAPI連携層をそのまま残さず、不要になった部分を整理・撤去する計画もあらかじめ用意しておくことが望ましいです。

移行途中は必要だった連携の仕組みも、全面移行が完了すれば不要な複雑性として残り続けます。プロジェクトの最終フェーズに「連携層の整理」を組み込んでおくことで、将来の保守負担を減らすことができます。

よくある質問(FAQ)

Q. 段階的移行は一括移行よりも必ず期間が長くなりますか? A. フェーズ分けによって全体のプロジェクト期間が延びる場合はありますが、各フェーズのリスクが小さくなるため、手戻りによる遅延は抑えやすくなる傾向があります。

Q. API連携の設計は自社で検討する必要がありますか? A. 業務要件とシステム構成の両方を踏まえた設計が必要なため、開発会社と共同で検討することをおすすめします。

Q. 中間の連携層はどれくらいの期間残すべきですか? A. 移行フェーズの数や業務の複雑さによって異なりますが、全フェーズの移行が完了し、安定稼働が確認できた段階で整理を進めるのが一般的です。

Q. 小規模なシステムでも段階的なアーキテクチャは必要ですか? A. 小規模であればビッグバン移行の方がシンプルに済むケースもあります。業務が止められない機能があるかどうかが、段階的移行を検討する目安になります。

まとめ

大規模なシステム移行では、API連携を軸に新旧システムを共存させながら段階的に置き換えていくアーキテクチャが、業務影響とプロジェクトリスクを抑える現実的な選択肢になります。データの正をどちらに置くかを明確にし、業務影響の小さい単位でフェーズを区切ること、そして移行完了後の連携層の整理まで見据えておくことが、無理のない移行につながります。

Irwin&co株式会社は、AI駆動開発により開発費を相場の約1/2に抑えながら、段階的な移行アーキテクチャの設計にも対応しています。初回商談では動くデモを無償で提示していますので、大規模移行の進め方でお悩みの場合はお問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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