非エンジニアにも伝わる要件定義書の書き方
システム開発を発注する立場の非エンジニアが、開発会社に正しく意図を伝えるための要件定義書の書き方を、構成要素と具体的なコツに分けて解説します。
「要件定義書を作れと言われても、専門用語も分からないし、何をどこまで書けばいいのか見当がつかない」「現場の要望をまとめて開発会社に渡したのに、思っていたものと違うシステムができあがってしまった」——システム開発の発注担当になった非エンジニアの方から、こうした声をよく耳にします。
要件定義書は、開発会社に対して「何を」「なぜ」「どのように」実現してほしいかを伝える、プロジェクトの土台となる資料です。専門的なプログラミング知識がなくても、伝わる要件定義書を書くことは十分に可能です。むしろ現場の業務を最もよく理解しているのは発注側であることが多く、現場目線の情報こそが開発会社にとって価値のある材料になります。
この記事では、非エンジニアの方でも実践できる要件定義書の書き方を、構成要素と具体的なコツに分けて解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 要件定義書に必要なのはプログラミング知識ではなく、「誰が」「何のために」「どう使うか」を言語化する力
- 構成は背景・目的、現状の課題、実現したいこと、優先順位の4つを押さえれば十分
- 抽象的な要望ではなく、具体的な業務シーンや数値で書くことが伝わりやすさの鍵
- 完璧を目指さず、開発会社とのすり合わせを前提に「たたき台」として作成するのが現実的
要件定義書に専門知識は必要ない
結論:要件定義書に求められるのは技術的な知識ではなく、業務内容と要望を明確に言語化する力です。
システム開発というと専門的で難しいイメージがありますが、要件定義書の役割は「実現したいこと」を開発会社に正確に伝えることであり、実装方法そのものを指定することではありません。むしろ現場の業務フローや困りごとを最もよく知っているのは、日々その業務に携わっている発注側の担当者です。専門用語を使いこなす必要はなく、自分たちの言葉で具体的に書くことの方が重要になります。現場を巻き込んだ要件定義の進め方については、現場を巻き込む要件定義のやり方でも詳しく解説しています。
要件定義書の基本構成
結論:要件定義書は「背景・目的」「現状の課題」「実現したいこと」「優先順位」の4項目を押さえれば、非エンジニアでも実用的な内容を作成できます。
まず「なぜこのシステムが必要なのか」という背景・目的を明記し、次に現状どのような課題が発生しているかを具体的に記述します。その上で、システムに実現してほしいことを箇条書きで整理し、最後にすべての要望に優先順位をつけます。この4項目があれば、開発会社は要望の背景を理解した上で、実現方法を提案しやすくなります。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 背景・目的 | なぜ今システムが必要なのか、達成したい状態 |
| 現状の課題 | 現在の業務フローで困っていること、非効率な点 |
| 実現したいこと | システムに求める機能・動作を箇条書きで |
| 優先順位 | 必須/あれば嬉しい、の2段階程度で区分 |
伝わる要件定義書を書く3つのコツ
結論:抽象的な表現を避け、具体的な業務シーンや数値で書くことが、開発会社に正確に伝えるための最大のポイントです。
「使いやすくしてほしい」「効率化したい」といった抽象的な要望だけでは、開発会社は何をどう実装すべきか判断できません。「見積書の作成に平均30分かかっているのを、5分以内にしたい」というように、具体的な業務シーンと数値を添えることで、開発会社は的確な提案をしやすくなります。
コツ1:「誰が」「いつ」使うかを明記する
利用者が営業担当なのか経理担当なのか、日次で使うのか月次で使うのかによって、必要な機能や画面設計は大きく変わります。利用シーンをできるだけ具体的に書きましょう。
コツ2:現状の業務フローを図や箇条書きで示す
文章だけで業務フローを説明するのが難しい場合は、簡単な図や箇条書きで現状の流れを示すだけでも、開発会社の理解は大きく深まります。
コツ3:完璧を求めず「たたき台」として作成する
要件定義書は一度で完成させる必要はありません。開発会社とのヒアリングを通じてすり合わせていくことを前提に、まずは現時点で分かる範囲をまとめる意識で作成することが現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q. 要件定義書はどのくらいのボリュームで書けばいいですか? A. 業務規模にもよりますが、まずは背景・課題・実現したいこと・優先順位が分かる程度でも十分です。開発会社とのヒアリングで詳細を詰めていく前提で問題ありません。
Q. システムに詳しい社員がいない場合はどうすればいいですか? A. 業務内容を最もよく知る現場担当者が、現状の課題と要望を言語化するだけでも十分な材料になります。開発会社に相談しながら進めることも可能です。
Q. 要望が多すぎて優先順位がつけられません。 A. 「なくては業務が回らないもの」と「あれば助かるもの」の2段階で仕分けるだけでも、開発会社との認識合わせがしやすくなります。
Q. 要件定義書を作らずに発注することもできますか? A. 可能な場合もありますが、認識のズレが後の手戻りにつながりやすいため、簡易的にでも作成しておくことをおすすめします。開発会社の選び方については受託開発会社の選び方も参考になります。
まとめ
要件定義書に専門的なプログラミング知識は必要なく、非エンジニアでも「背景・目的」「現状の課題」「実現したいこと」「優先順位」の4項目を押さえることで、開発会社に伝わる内容を作成できます。抽象的な表現ではなく具体的な業務シーンと数値で書くこと、そして完璧を求めず開発会社とのすり合わせを前提にたたき台として作成することが、実践的なコツです。
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執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
