複数SaaSを跨いだデータの一元化が難しい理由と対策

営業・請求・在庫など複数のSaaSを部門ごとに導入していると、同じ顧客の情報がシステムごとにバラバラに存在してしまいがちです。データが一元化できない構造的な理由と、現実的な対策を解説します。

2026年09月23日
複数SaaSを跨いだデータの一元化が難しい理由と対策

「顧客情報を確認するのに、営業管理のSaaSと請求システムと問い合わせ管理ツールを、いちいち行き来しなければならない」——複数のSaaSを部門ごとに導入している企業から、こうした相談が寄せられることがあります。それぞれのツール単体では便利に使えていても、部門をまたいでデータを見ようとすると、途端に手間が増えてしまうのです。

この背景には、SaaSが基本的に「自社の業務範囲」に最適化されて作られているという構造があります。営業支援に特化したSaaSは営業活動のデータを、請求管理に特化したSaaSは請求データを、それぞれ自社のデータベース内に閉じて持っており、他社のSaaSとシームレスに連携することは前提とされていないことが多いのです。

この記事では、複数SaaSを跨いだデータの一元化がなぜ難しいのか、その構造的な理由と、現実的に取り得る対策について解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • SaaSごとにデータベースが分離しており、単純な参照だけでは情報を横断できない
  • 顧客IDや商品コードなどの**「キー」の持ち方がSaaS間で統一されていない**ことが多い
  • API連携やCSV連携で部分的につなぐことはできるが、運用が複雑になりやすい
  • 根本的に解決するには、共通のデータ基盤を中心に据える設計を検討する必要がある

データが一元化できない構造的な理由

結論:複数のSaaSはそれぞれ独立したデータベースを持っており、顧客や商品を識別する「キー」の管理方法もSaaSごとに異なるため、単純に並べただけでは同じ対象を指しているかどうか判断できません。

例えば、営業管理SaaSでは顧客を社名で管理し、請求管理SaaSでは取引先コードで管理している場合、両方のシステムにまたがって同じ顧客の情報を突き合わせるには、何らかの対応表や統一ルールが必要になります。この対応関係が整備されていないと、担当者が手作業で名寄せをしながら情報を集めることになり、確認作業に時間がかかるだけでなく、入力ミスや表記ゆれによる取り違えのリスクも生まれます。

よくある連携パターンとその限界

結論:API連携やCSVエクスポート・インポートによる連携は一定の効果がありますが、SaaSの仕様変更に影響を受けやすく、連携数が増えるほど運用負荷も比例して増えていきます。

連携方法メリット限界
API連携リアルタイムに近い形でデータを同期できるSaaS側の仕様変更で連携が壊れることがある
CSVエクスポート・インポート導入しやすく、初期コストが低い手作業が残りやすく、更新頻度に限界がある
RPAによる自動転記画面操作をそのまま自動化できる画面レイアウトの変更に弱く、保守負荷が高い

SaaSの数が2〜3個程度であれば、こうした連携で対応できることもあります。しかし部門ごとに導入したSaaSが5個、10個と増えていくと、連携の組み合わせも増え、どこかが変更されるたびに他の連携にも影響が出るという状態になりがちです。二重入力をなくすシステム間連携の設計パターンでも触れているとおり、連携が複雑化すればするほど、保守コストは無視できないものになります。

根本的な対策:共通データ基盤を中心に据える

結論:個々のSaaS同士を無理に連携させるのではなく、顧客・商品・案件といった共通データを一元管理する基盤を中心に据え、各SaaSやシステムをその基盤と連携させる設計に切り替える方が、中長期的には保守しやすい構造になります。

SaaS同士を個別に連携させる「点と点」の設計は、システムの数が増えるほど連携の組み合わせが増え、複雑化していきます。これに対して、共通のデータ基盤(マスタデータ管理の仕組み)を中心に据え、各システムはその基盤とだけ連携するという「ハブ型」の設計にすると、新しいシステムを追加する際も基盤との連携だけを考えればよくなります。蓄積データを自然文で検索するRAG検索の業務活用のように、一元化されたデータを前提としたAI活用も検討しやすくなる点もメリットです。

移行・統合を検討する際の進め方

結論:一元化の必要性を感じたら、まずはどのデータが複数のSaaSに重複して存在しているかを棚卸しし、優先度の高いデータから統合を検討するのが現実的な進め方です。

いきなりすべてのSaaSを統合しようとすると、対象範囲が広すぎて計画が立てにくくなります。まずは顧客マスタなど、複数のシステムで最も重複・不整合が起きやすいデータから優先的に整理し、段階的に統合範囲を広げていくアプローチが現実的です。補助金を活用できるケースもあるため、AI開発向け補助金活用ガイドもあわせて参考にしてみてください(申請可否については事務局・専門家への確認をおすすめします)。

よくある質問(FAQ)

Q. すべてのSaaSを一つのシステムに統合する必要がありますか? A. 必ずしもその必要はありません。重複・不整合が起きやすいデータから優先的に統合し、それ以外はAPI連携で対応するという併用も現実的な選択肢です。

Q. 共通データ基盤を作るのは大掛かりな話になりませんか? A. 対象範囲を段階的に絞ることで、小さく始めることも可能です。まずは無償のデモを通じて、自社の業務にどこまで対応できるか確認いただくのも一つの方法です。

Q. 既存のSaaSを使い続けながら一元化を進められますか? A. 既存SaaSを残したまま、共通データ基盤と連携させる形で段階的に移行するケースが多く見られます。

まとめ

複数のSaaSを跨いだデータの一元化が難しいのは、SaaSがそれぞれ独立したデータベースを持ち、識別キーの管理方法も統一されていないという構造的な理由によるものです。API連携やCSV連携で部分的に対応することもできますが、システムの数が増えるほど運用は複雑化していきます。中長期的には、共通のデータ基盤を中心に据えた設計に切り替えることで、保守しやすい構造を作ることができます。

Irwin&co株式会社では、複数SaaSに分散したデータの統合・一元化についても相談を受け付けており、案件継続率95%という実績のもとで継続的な改善にも対応しています。データの分散にお困りの場合は、お問い合わせから現状の構成をお聞かせください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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