移行プロジェクトの社内体制づくり:担当者は何をすべきか

システム移行プロジェクトを任された担当者が何から着手すべきか分からないという悩みに向けて、必要な社内体制と担当者の役割分担の考え方を解説します。

2026年09月12日
移行プロジェクトの社内体制づくり:担当者は何をすべきか

「移行プロジェクトの担当を任されたが、何から手をつければいいか分からない」——専任のIT担当者がいない企業で、突然プロジェクトの旗振り役を任された方から、こうした相談を受けることがあります。日常業務と兼務しながらの担当であればなおさら、進め方の見通しが立たず不安になるのは自然なことです。

システム移行プロジェクトがうまく進まない原因の多くは、技術的な難しさよりも、社内の体制や役割分担が曖昧なまま進んでしまうことにあります。逆に言えば、体制さえ整えておけば、専任のIT担当者がいない企業でも移行を着実に進めることは可能です。

この記事では、移行プロジェクトに必要な社内体制と、担当者が具体的に何をすべきかを整理して解説します。

この記事の要点(30秒でわかるまとめ)

  • 移行プロジェクトの停滞は役割分担の曖昧さから生じることが多い
  • 最低限意思決定者・現場代表・進行管理者の3つの役割を明確にする
  • 担当者の主な仕事は開発すること自体ではなく、社内外の橋渡し
  • 開発会社とのやり取りを一本化することで、認識のズレを防ぎやすくなる

移行プロジェクトが停滞する理由

結論:移行プロジェクトが停滞する主な原因は、技術的な難易度よりも、社内の役割分担が曖昧なまま進行してしまうことにあります。

「誰が最終的に仕様を決めるのか」「現場からの要望は誰が取りまとめるのか」が不明確なまま進むと、開発会社とのやり取りのたびに社内での確認が発生し、スケジュールが後ろ倒しになっていきます。IT専任者がいない中小企業がDXを進める際の現実的なステップについては、IT専任者のいない中小企業がDXを進める現実的なステップでも解説しています。

移行プロジェクトに必要な3つの役割

結論:規模の大小にかかわらず、意思決定者・現場代表・進行管理者という3つの役割を明確にしておくことが、プロジェクトを円滑に進める土台になります。

役割主な責務
意思決定者仕様や予算に関する最終判断を行う(経営層または部門責任者)
現場代表現場の要望を整理し、開発会社に伝わる形にまとめる
進行管理者スケジュール管理、開発会社との窓口、社内への進捗共有

小規模な企業では、これらの役割を1人が兼務することも珍しくありません。重要なのは人数ではなく、「誰が何を担うか」が社内で共有されている状態をつくることです。

現場を巻き込む重要性

結論:進行管理者や意思決定者だけで仕様を決めてしまうと、実際に使う現場との認識にズレが生じ、稼働後に「使われないシステム」になるリスクが高まります。

現場のヒアリングは、プロジェクトの初期段階から継続的に行うことが望ましく、要件定義の段階だけでなく、開発途中の確認でも現場の声を反映させる仕組みが必要です。現場を巻き込む要件定義の具体的な進め方は、現場を巻き込む要件定義のやり方:ヒアリングから合意形成までで詳しく解説しています。

担当者が具体的にやるべきこと

結論:移行プロジェクトの担当者の主な仕事は、自らシステムを開発することではなく、社内の意見を集約し、開発会社との橋渡しを行うことです。

  • 要望の集約:現場から出てくる要望を整理し、優先順位をつけて開発会社に伝える
  • 進捗の可視化:開発の進み具合を社内に定期的に共有し、認識のズレを防ぐ
  • 窓口の一本化:開発会社とのやり取りを担当者に集約し、複数ルートからの矛盾した指示を避ける
  • 動くデモでの確認:仕様書だけで判断せず、実際に動くものを早い段階で確認する

窓口を一本化することは特に重要で、複数の部署が個別に開発会社へ要望を伝えてしまうと、要件が食い違ったまま開発が進んでしまうリスクがあります。契約前の動くデモの活用方法については、契約前の「動くデモ」で何を確認すべきか:失敗しない発注前チェックも参考になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 専任のIT担当者がいない場合、誰が進行管理者を担うべきですか? A. 必ずしもIT知識が豊富な人である必要はなく、社内の調整力があり、現場と経営層の橋渡しができる人が適任であるケースが多いです。

Q. 現場を巻き込みすぎると意思決定が遅くなりませんか? A. 現場の声をすべて反映させる必要はなく、優先順位をつけて取捨選択する役割を進行管理者が担うことで、意思決定の速度を保てます。

Q. 開発会社とのやり取りは誰が担当すべきですか? A. 窓口は1人または少人数に一本化することをおすすめします。複数の担当者が個別にやり取りすると、要件の食い違いが生じやすくなります。

Q. 兼務で担当者を務める場合、どの業務を優先すべきですか? A. 日常業務と両立させるためには、要望の集約と進捗共有を定例化し、都度対応ではなく決まったタイミングで処理する仕組みをつくることが有効です。

まとめ

移行プロジェクトの成否は、技術力以上に社内の体制づくりに左右されます。意思決定者・現場代表・進行管理者という役割を明確にし、担当者は開発そのものではなく社内外の橋渡し役に徹することで、専任のIT担当者がいない企業でも移行を着実に進めることが可能です。

Irwin&co株式会社では、初回商談時点で動くデモをお見せしながら要件を具体化するため、社内の合意形成もスムーズに進めやすいことが特徴です。移行プロジェクトの体制づくりでお悩みの場合は、お問い合わせからご相談ください。

執筆者プロフィール

アーウィン 海(Irwin&co株式会社 代表取締役)

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役

生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。

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