複数の補助金制度を併用する際の注意点
システム投資の負担を抑えるために複数の補助金を併用したいが、ルールが分からず不安という方に向けて、併用時に注意すべき基本的な考え方を解説します。
「IT導入補助金とAI開発向けの補助金、両方使えないか」「複数の制度を組み合わせれば、投資負担をもっと抑えられるのではないか」——システム投資の予算を検討する中で、こうした相談が寄せられることがあります。補助金制度は数多く存在し、対象経費や申請時期が異なるため、うまく組み合わせられれば投資負担を抑えられる可能性がありますが、併用にはいくつかの基本的なルールと注意点があります。
制度の詳細や申請可否は個別の状況によって異なり、最終的な判断は専門家や各事務局への確認が前提となりますが、全体像を把握しておくことで検討の進め方がスムーズになります。この記事では、複数の補助金制度を併用する際に押さえておきたい基本的な注意点を整理します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 複数の補助金を併用する際の大原則は**「同一の経費に対して重複して受給できない」**こと
- 併用する場合は、対象経費を制度ごとに切り分けるか、申請の時期をずらすのが基本的な考え方
- スケジュール管理と書類の整合性が、併用時に最も実務的な負担になりやすい
- 併用の可否・条件は制度・公募回ごとに異なるため、専門家・各事務局への個別確認が必須
なぜ複数の補助金併用を検討する企業が増えているのか
結論:システム投資の規模が大きくなるほど、1つの補助金では対象経費や補助上限をカバーしきれないケースが増えているためです。
AI開発向けの補助金では開発費の最大80%、最大1億円までが補助対象となる制度もありますが、投資規模によってはこの上限を超えるケースや、対象外の経費が発生するケースもあります。AI開発に使える補助金活用ガイドで解説したように、制度ごとに対象経費や補助率が異なるため、「本体システムの開発費はAI開発向けの補助金で、周辺の業務ツール導入費はIT導入補助金で」といった切り分けを検討する企業が増えています。
併用の基本原則:同一経費への重複受給はできない
結論:どの補助金制度にも共通する基本原則は、「同一の経費に対して複数の補助金から重複して補助を受けることはできない」という点です。
これは国の補助金制度に共通する考え方で、1つの支出(例:システム開発費の中のある機能のA工程)に対して、複数の制度から補助金を受け取ることは原則として認められません。併用を検討する際は、まず「どの経費をどの制度の対象にするか」を明確に切り分ける必要があります。この切り分けが曖昧なまま申請を進めると、審査段階や実績報告の段階で指摘を受ける可能性があります。
併用パターン1:対象経費を分けて申請する
結論:システム開発プロジェクトを複数の経費区分に分け、それぞれ異なる制度の対象として申請する方法が基本的な併用パターンです。
例えば、AIを活用した基幹システムの開発費本体と、周辺で必要になる業務効率化ツールの導入費を分けて考え、それぞれ対象となる制度に申請するという考え方です。IT導入補助金とAI開発向け補助金の違いと使い分けで触れているように、制度ごとに対象経費の定義が異なるため、自社のプロジェクトのどの部分がどの制度の対象になるかを、事前に整理しておく必要があります。補助金の対象経費・対象外経費の見極め方も合わせて確認しておくと、切り分けの精度が上がります。
併用パターン2:申請の時期をずらす
結論:同じプロジェクトでも、フェーズを分けて異なる公募回・制度に申請するという時間軸での併用パターンもあります。
例えば、第一フェーズの基本システム開発は今年度の公募で、第二フェーズの機能拡張は来年度の別制度でといった形で、時期をずらして申請する方法です。この場合、各フェーズの経費区分と成果物の切れ目を明確にしておく必要があり、補助金を使ったシステム開発のスケジュールで解説しているような公募スケジュールの把握が重要になります。
併用時に注意したい実務ポイント
結論:併用を実務面で成立させるには、スケジュール管理と書類の整合性の2点に特に注意が必要です。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| スケジュールの整合性 | 制度ごとに公募期間・事業実施期間が異なるため、全体スケジュールの調整が複雑になる |
| 書類・経費区分の整合性 | 同じ見積書・契約書を複数制度に流用すると、経費の重複と見なされるリスクがある |
| 実績報告の負担 | 制度ごとに異なる報告フォーマット・期限への対応が必要になる |
特に、複数制度を併用する場合は見積書や契約書を制度ごとに明確に分けて作成する必要があり、開発会社側にもこの点を正しく理解してもらう必要があります。見積書の作成段階からこうした切り分けを意識しておくと、後の実績報告がスムーズになります。
専門家への確認が必須な理由
結論:併用の可否・条件は制度・公募回ごとに細かく異なり、年度によって運用が変わることもあるため、断定的な判断は避け、専門家・事務局への個別確認を前提に進めることが重要です。
補助金制度は毎年のように要件や運用が見直されるため、「去年はこの併用ができた」という情報が今年は当てはまらないこともあります。併用を検討する段階で、中小企業診断士など補助金に詳しい専門家や各事務局へ早めに相談し、自社のケースに即した判断を得ることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 複数の補助金を併用すると、補助額は単純に合算できますか? A. 対象経費が明確に分かれていれば、それぞれの制度の補助額を受け取ることは可能ですが、同一経費への重複受給はできません。経費区分を明確にした上で、各事務局に確認することをおすすめします。
Q. 併用を前提に申請すると、採択率に影響しますか? A. 制度や公募回によって審査基準は異なるため、断定的にはお答えできません。併用を考えている場合は、その旨を事業計画書に明記し、整合性のある説明ができるよう準備しておくとよいでしょう。
Q. 同じ開発会社に発注すれば、併用の書類整理も手伝ってもらえますか? A. 開発会社によって対応範囲は異なります。経費区分に応じた見積書の分割など、実務的な協力ができる部分もありますが、申請可否や制度解釈そのものは専門家・事務局への確認が基本です。
Q. 併用がうまくいかなかった場合、どちらかの補助金を取り消されることはありますか? A. 経費の重複受給が判明した場合、交付決定の取り消しや返還を求められる可能性があります。併用を検討する際は、事前の整理と確認を徹底することが重要です。
まとめ
複数の補助金制度を併用する際は、「同一経費への重複受給はできない」という大原則を踏まえ、経費区分を制度ごとに分ける、または申請時期をずらすといった方法で整理することが基本になります。スケジュールと書類の整合性に注意しながら、最終的な判断は専門家・事務局への確認を前提に進めましょう。
Irwin&co株式会社では、見積書・要件定義書をフォーム回答から約3分で自動生成できる仕組みを用意しており、補助金申請に必要な経費区分の整理にも対応しやすい体制を整えています。システム投資と補助金活用を合わせて検討したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
