不採算案件・赤字案件を見極める営業データの見方
受注はできているのに利益が出ない不採算案件・赤字案件を、営業データからどう見極め、早期に手を打つべきかを解説します。
「売上は伸びているはずなのに、なぜか利益が思うように残らない」——営業部門を持つ企業の経営層や管理職から、こうした悩みを聞くことがあります。原因を調べてみると、受注件数自体は増えているものの、その一部が実は採算の取れていない案件だった、というケースは少なくありません。
不採算案件は、受注時点では分かりにくいことが多く、プロジェクトが進んでからコストが積み上がって初めて赤字が判明する、という流れをたどりがちです。これを防ぐには、個々の案件の採算性を営業データとして可視化し、早い段階で傾向を掴んでおくことが欠かせません。
この記事では、不採算案件・赤字案件を営業データからどう見極めるか、実務でよく使われる視点を整理して解説します。
この記事の要点(30秒でわかるまとめ)
- 不採算案件の多くは**「受注時の見積精度」「工数の積み上がり」「価格交渉の経緯」のいずれかに原因がある**
- 案件ごとの実績工数・実績コストと見積時の想定を比較するデータを持つことが見極めの出発点になる
- 不採算の兆候は**「特定の担当者」「特定の業種」「特定の取引条件」に偏る傾向が見られることが多い**
- データで傾向を掴んだうえで、受注前の判断基準に反映する仕組みまで作ることが重要
不採算案件の原因を3つに分けて考える
結論:不採算案件が発生する原因は、「受注時の見積精度」「工数の積み上がり」「価格交渉の経緯」の3つに大きく分けて考えると、整理しやすくなります。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 受注時の見積精度 | 案件の難易度やボリュームを見積時点で正しく見積もれていない |
| 工数の積み上がり | 進行中に追加対応や仕様変更が発生し、想定工数を超えてしまう |
| 価格交渉の経緯 | 競合対抗や関係維持のために、採算を割った価格で受注してしまう |
このうち、見積段階で分かる原因と、進行中に初めて分かる原因が混在しているため、どの段階のデータを見るかによって対策の打ち方も変わってきます。見積時の精度に課題がある場合は、CRM/SFA投資の費用対効果はこう計算するで紹介しているような投資対効果の考え方を、見積プロセスの改善にも応用できます。
実績データと見積時の想定を比較する
結論:不採算案件を見極めるには、案件ごとの実績工数・実績コストと、見積時点で想定していた工数・コストを比較できるデータを持つことが出発点になります。
見積時の想定と実績にどの程度のズレがあるかを案件ごとに記録していくと、「どのタイプの案件で見積が外れやすいか」という傾向が見えてきます。例えば、特定の業務内容や特定の規模の案件で一貫してズレが大きい場合、その領域の見積基準そのものを見直す必要があるというシグナルになります。このようなデータを継続的に蓄積していく仕組みについては、顧客データを「資産」に変える:蓄積と活用のデータ設計でも解説している設計の考え方が参考になります。
不採算の偏りを「担当者」「業種」「取引条件」で見る
結論:不採算案件はランダムに発生するのではなく、特定の担当者、特定の業種、特定の取引条件に偏る傾向が見られることが多くあります。
案件データに担当者・業種・取引条件(価格交渉の有無、支払条件など)の情報を紐づけて集計すると、「特定の条件が重なったときに不採算になりやすい」というパターンが見えてくることがあります。例えば、競合の多い業種で価格交渉が発生した案件に不採算が集中している、といった傾向が分かれば、その条件に該当する案件については見積段階でより慎重な判断を行う、という対応につなげられます。こうした分析は、失注理由の分析を営業プロセス改善に活かす方法で紹介している失注分析と組み合わせることで、受注・失注・不採算という3つの軸から営業プロセス全体を見直すきっかけになります。
見極めた傾向を受注前の判断基準に反映する
結論:不採算案件の傾向をデータで把握したら、その傾向を受注前の判断基準や承認プロセスに反映させるところまで仕組み化することが重要です。
分析だけで終わってしまい、受注の現場に反映されないまま同じパターンの不採算案件が繰り返される、というケースは少なくありません。過去の不採算傾向に当てはまる条件の案件については、見積段階で追加の承認ステップを設けるなど、受注プロセスの中にチェックポイントを組み込むことで、再発を防ぎやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 不採算案件のデータはどのくらいの期間分蓄積すれば傾向が見えてきますか? A. 案件数や業種によって異なりますが、季節性や取引先の傾向も踏まえると、最低でも1年分程度のデータがあると傾向を掴みやすくなるケースが多いといえます。
Q. 不採算の判断基準(どこからが赤字か)はどう決めればよいですか? A. 直接コストだけでなく、営業活動にかかった時間や間接コストも含めて考えるかどうかで基準が変わります。自社の原価計算の考え方に合わせて社内で基準を定めておくことが望ましいといえます。
Q. 不採算案件が多い担当者への対応はどうすべきですか? A. 個人の能力の問題と決めつけず、担当している業種や取引条件の傾向も含めて分析することが重要です。構造的な要因であれば、担当者個人だけでなく営業プロセス全体の見直しが必要になります。
Q. 既存のExcel管理でもこうした分析は可能ですか? A. 案件数が少ないうちはExcelでも可能ですが、担当者・業種・工数といった複数の軸で集計する必要が出てくると、管理が煩雑になりやすい傾向があります。
まとめ
不採算案件・赤字案件を見極めるには、見積時の想定と実績を比較するデータを持ち、担当者・業種・取引条件といった軸で傾向を分析し、その傾向を受注前の判断基準に反映する仕組みまで作ることが重要です。データとして可視化することで、感覚的な「この案件は危なそう」という判断を、根拠のある基準に変えていくことができます。
Irwin&co株式会社では、営業データの蓄積・分析から受注判断に活用できる仕組みづくりまで、業務に合わせたシステム開発を支援しています。営業データの活用についてのご相談はお問い合わせからお気軽にどうぞ。
執筆者プロフィール

アーウィン 海Irwin&co株式会社 代表取締役
生成AIを活用したシステム開発・コンサルティング・研修サービスを提供するIrwin&co株式会社を創業し、IT専任者のいない中小企業を中心に、業務システムの構築とSaaSからの移行を支援している。「SaaSの標準機能に業務を合わせるのではなく、業務に合わせたシステムを自社の資産として持つ」という考え方のもと、不動産をはじめとする業界で、生成AIを前提とした業務システムの設計・開発を数多く手がける。
